キャンピングカー&トラベルトレーラー専門店のトイファクトリー フィアットプロフェッショナル正規販売ディーラー

2026/08/09 カテゴリ:藤井 太一

世界地図で見るトイファクトリー 

Writer

藤井 太一

「トイファクトリー、嘘だろ!?」 

バンコクで開かれたFIAT PROFESSIONAL授賞式で通訳を務めた翌日、私は現地のキャンピングカーメーカーを訪ね歩いていた。トイファクトリーが扱うウォーターレストイレ Clesanaのタイ市場調査が目的だった。計画性のない私は事前のアポ取りをしておらず、当日になって「日本から面白いトイレを持って来たので、会ってもらえませんか?」とインスタのDMを送りつけた。午後までに三社とのミーティングを取り付け、Grab(東南アジア版Uber)という安全性のかけらもないノーヘル二ケツバイクタクシーで市内を駆け抜けていた。 

「トイファクトリー!?」と声をかけてきたのは、そのうちの一社で居合わせた初老のオーストラリア人客だった。なんで知ってるの、とぽかんとしていた私に、彼はYoutubeのトイファクトリー動画プレイリストを見せてきた。これで勉強してるんだ、ところでこのアクリルウィンドウ、どういう仕組み、と。聞くと彼はオーストラリアでハイエースのDIYをしており、お手本としてトイファクトリーを熱心に調べていたようだ。輸出を行っていない同社の海外認知度にまったく期待していなかった私は、不意に鼻が高くなった。思えば三社がミーティングに応じてくれたのも、トイファクトリーの名前があってこそだったのだ。 

そして先日、またもやオーストラリアから嬉しい来客があった。ここで働かせてくださいっ、と三十代の男性が、やはりアポ無しで、岐阜県のトイファクトリー本社までやってきた。彼はイタリア出身で、自由な生き方を求めてオーストラリアに移住した。そこで体験した荒野のキャンピングカー旅行が忘れられず、DIYを始め、本格的な勉強先として日本のトイファクトリーを選んだのだという。 

オーストラリアは言わずと知れたキャンピングカー大国だ。人口は日本の四分の一程度であるのに対して、キャンピングカーの保有台数は日本の五倍を超える。それでいて、なぜ彼らはトイファクトリーに注目したのだろうか。その答えは、たぶんラーメンと同じだ。  

ラーメン、焼肉、カレーライス、ゲームやアニメのように、日本人は輸入品を魔改造するのが得意で、それが本場に出戻って人気を博している── そんな話を最近よく耳にする。トイファクトリーのキャンピングカーも、人知れず、この系譜を辿っているのではないだろうか。 

20世紀半ば、ウェストファリア社がフォルクスワーゲンバスのベッドキットを販売して以来、ドイツは世界のキャンピングカー文化の発信地であり続けている。トイファクトリー代表、藤井昭文はそのドイツに創業当初より四半期に一度のペースで通い続け、第一線のデザインを日本市場に取り込み、そして魔改造してきた。その一台は、小さな空間が賢く活かされ、断熱性能が高く、耐久性があり、そしてそのすべてが欧州由来のデザインコードでまとめられている。そんな和製キャンピングカーに夢中のオーストラリア人二人に連続して出会ったのは、果たして偶然なのか、氷山の一角なのか、それはわからない。 

21世紀も四半期が過ぎた。引き算の美学が評価され、クーラーを持たない都市を熱波が襲い、買い替えないことが贅沢になりつつある。独自の進化を遂げたトイファクトリーのキャンピングカーは、新しい世界の需要の兆しを掴む事はできないだろうか。世界地図を広げてみても、そこに並ぶものはまだいない。 

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