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松の枯れをめぐるマツノザイセンチュウ(線虫)とマツノマダラカミキリ(カミキリ)の動き |
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ここに「松くい虫」によって枯れたマツの木があるとしましょう。その材には病原であるマツノザイセンチュウ(線虫)と媒介者であるマツノマダラカミキリ(カミキリ)が生息しています。 |
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カミキリの成虫は5月下旬から7月中旬、この枯れたマツの木から出ていきます。6月のうちにこの脱出のピークがあります。このとき、カミキリは体の中に線虫を詰めています。この数は1頭のカミキリあたり1万以上のことも珍しくありません。 |
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このカミキリは元気なマツの細い枝に飛んでいきます。そこでこの枝の皮を食べます―これを「後食(こうしょく)」といいます。このとき、線虫はカミキリの体から出て、カミキリがかじった枝の傷からマツの中に入っていきます。 |
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線虫はマツを侵して、マツは弱り、8?9月から枯れが目立ってきます。 |
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こうして弱り、また枯れたマツの幹や枝の皮に、7から8月、カミキリは産卵します。 |
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卵は1週間もすればふ化します。そして8?10月、幼虫ははじめマツの内皮を、ついで材の表面を食べて成長します。一方、線虫は材の中で交尾・産卵を重ねて増えていきます。 |
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幼虫は材に細い穴を掘り、11月になるとその穴に木屑を詰めて、穴の行き止まりに潜んで冬を越します。年を越して2月を過ぎると、線虫はカミキリの幼虫のまわりの材に集まります。 |
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5から6月に幼虫はさなぎになります。 |
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さなぎはその15から30日後には成虫になります。このとき、線虫はカミキリの体に移り、その体内に入ります。 |
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そしてまた、5月下旬から7月中旬、カミキリの成虫はこの枯れたマツから出て行くのです。
体の中には線虫を詰めて…。
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このように、カミキリは1年に1世代を経ます。これに伴って、線虫はマツの木に運ばれてこれを枯らします。そしてその材のなかでカミキリに近づき、これにとりつきます。すなわち、伝染の鎖は1年に1回転します。 |