ワールド・ソーラー・チャレンジ2011「SOLAR IN THE RAIN」
快調に距離を積み上げてきたレキオンが天候に弄ばれている。
終盤に来て、この2日間は太陽のないソーラーカーレースとなった。
スタート直後から雨が降り始め、チェースカーのフロントガラスにも音を立てて無情の雨が降る。
レキオンには最新鋭のリチウムイオンバッテリーが搭載されている。
昨日、今日とレキオンは充分なエネルギー補充がないまま、モーター駆動の放電を続けてきた。
このバッテリーは最終段階の電圧降下が急激で、しかも深放電は安全上好ましくない。
走らせたい気持ち、移り変わる天気、止める勇気、その判断と見極めが非常に難しい。
上空の動かない雨雲と目指す南の空模様。それらを目まぐるしく眺めながら、あと10分、せめてあと1キロと我慢の走行が続く。
チェースカーの前方50mをレキオンが行く。
ゆるく続く勾配を、少し疲れたひな鳥のように寂しげに登ってゆく。
見慣れたその後姿が今日は雨に打たれ、ミシュランのレースタイヤが粗い路面に細く長い水の帯を残す。
そして午後4時、スタートから2378km、第8コントロールポイントの置かれたグレンダンボの町まで47kmの地点で走行を停止した。アデレードまで約620km。
明日の朝9時までに越えなければならないコントロールポイントがある。
このバッテリー状態で停車を続けても充電は期待できない。
チーム監督の下した決断は伴走トラックでの積載移動。
アデレードのゴールラインを踏むために、自走距離を犠牲にして完走を目指す。
レースは残すところ2日間。
NEVER GIVE UP!